アンコールはリビングで
「……んっ、……」

いつもなら、すぐに情熱的で深いキスへと変わるのに。
今日の彼は、まるで壊れ物を扱うように、触れるだけの甘いキスを何度も何度も繰り返す。

「……凪。愛してる」

「……私も……っ、湊が、大好き……っ」

「……知ってる。でも、俺の愛の方が絶対重いから」

彼がふわりと微笑み、私の身体をふわりと横抱きにした。

「……っ、わっ、湊?」

「……今日は絶対寝かさねぇから。そんなくだらねぇ不安、俺の全部で消してやる」

彼の胸の中で、私は静かに腕を首に回した。

彼から伝わってくる圧倒的な熱と包容力が、私の心の奥底にあった黒いモヤを、嘘みたいに綺麗に焼き尽くしていく。

リビングから寝室へと向かう彼の足取りは力強く、迷いがない。

この腕の中こそが、私にとって世界で一番甘くて、絶対に揺らぐことのない『安全地帯』なのだ。

ドアが静かに閉まる音が、とろけるような夜の始まりを告げていた。
< 286 / 628 >

この作品をシェア

pagetop