アンコールはリビングで
「あー……食った。美味すぎ。やっぱ凪のご飯が一番疲労回復するわ。細胞に染み渡る感じがする」

食後の温かいハーブティーを飲みながら、湊は心底満足そうに息を吐き、椅子の背もたれに体を預けた。

さっき玄関で見た疲労困憊のオーラはすっかり消え去り、リラックスした柔らかい表情に戻っている。

「お粗末様でした。胃腸にも優しいメニューにしたから、明日も胃もたれしないはずだよ。……最近、スタジオに缶詰でちゃんとしたもの食べてなかったでしょ?」

私が呆れたように言うと、湊は苦笑して頭を掻いた。

「まぁな。この前リリースしたアルバムのプロモーションと、初夏のツアー準備が被ってて……妥協したくなくて、つい詰め込みすぎた」

その言葉に、胸の奥がチクリと痛んだ。
妥協を許さない彼のストイックさを知っているからこそ、心配になる。去年の夏、限界を迎えてしまった自分の姿がフラッシュバックする。

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