アンコールはリビングで
「……え、凪がやってくれんの?」

「うん。今日くらいはね。いつも、本当にお疲れ様」

温かい風を当てながら、サラサラの髪の根元を優しく梳いていく。

湊は最初、少し驚いたように目を見開いていたが、すぐに心地よさそうに再び目を閉じ、完全に私に身を委ねてきた。 

「……んー……なんか、すげぇ眠くなってくる……」

「ダメだよ、まだ寝ないでね。風、熱くない?」

「……ちょうどいい」

少し掠れた低い声。完全にリラックスしきっている彼の耳の先が、ドライヤーの熱のせいか、心地よい嬉しさのせいか、ほんのりと赤く染まっている。

規則的なモーター音の中、私は彼の髪を梳きながら、ソファの裏側に隠しておいたハイブランドの重厚な紙袋のことを考えていた。

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