アンコールはリビングで
私の名前は、水沢凪(みずさわ なぎ)。今年で32歳になる。
数え年で言えば、恐怖の「本厄」ど真ん中。

かつては仕事に忙殺され、深夜の揚げ物とアルコールで身体を壊した私だが、今のテーマはズバリ「免疫力向上」だ。

腸内フローラを整え、この厄年を無病息災で乗り切る。それが私の至上命題なのだ。

「……ふわぁ……。おい、凪」

リビングのドアが開き、地を這うような低い声が降ってきた。

振り返ると、そこには身長185センチの巨大な物体が、ドア枠に気怠げに寄りかかっている。

「おはよう、湊。……またすごいね、それ」

私の視線は、彼――早瀬湊(はやせ みなと)の頭頂部に釘付けになった。

芸術的としか言いようがないほど爆発した寝癖。
まるで現代アートだ。

国民的スターのオーラは、今朝も布団の中に置いてきたらしい。

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