アンコールはリビングで
「んー……腹減った……」

彼は重たそうに足をひきずって近づいてくると、私の背中にドスンと覆いかかってきた。
背中に感じるズッシリとした重みと、高い体温。

「ちょ、湊! 重いってば。今、お豆腐切るところなんだから」

「……んー。動くな、充電」

私の抗議なんて聞こえないふりをして、彼は私の首筋に顔を埋め、深呼吸するように匂いを嗅いでくる。
吐息が首にかかってくすぐったい。

2歳年下の彼は、外ではキリッとしているくせに、寝起きは驚くほど甘えん坊で、スキンシップ過多だ。

「……凪、また手の上で切ってんのかよ」

私の肩に顎を乗せたまま、彼が私の手元を覗き込んで不満げに鼻を鳴らす。

「見てるこっちがヒヤヒヤすんだよ。その指、怪我したらどうすんだ」

「大丈夫だってば。まな板出すより洗い物減るでしょ?」

「ケチくせぇなぁ……。俺にとっては大切な指なんだから、大事にしろよ」

ボソッと呟かれた言葉に、ドキリと心臓が跳ねる。
こういう不意打ちの台詞をサラッと言うから、この男は侮れない。

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