アンコールはリビングで
今回の同棲は、単なる「お試し」じゃない。俺は本気で、この先もずっと――それこそ一生、彼女と一緒にいるつもりでいる。

だとしたら、最初が肝心だ。
外堀から埋める、ではないが、彼女のバックグラウンドであるご両親に「信頼できる男」として認めてもらうことは、プロジェクト完遂(=結婚)への必須条件だ。

「……俺が凪さんのお父さんの立場だったら、こんな可愛い娘さんと付き合いたての、どこの馬の骨か分からない男と急に同棲するなんて聞いたら……怒り狂って絶対反対しますよ」

『ええ……それは早瀬くんの考えすぎじゃない?』

「いや、俺の勝手で悪いんですけど……やっぱり行かせてください。後々、凪さんの大切なご両親と拗れたり、関係が悪くなるのは嫌なんです。……最初が肝心っていいますし!」

少し強めに押すと、電話の向こうで凪さんが困ったように、でも少し嬉しそうに笑う気配がした。

『う、うん……? 早瀬くんがそこまで言うなら……。じゃあ、両親に紹介したい人がいるって感じで話しておくね』

「ありがとうございます。……必ず、認めてもらってみせますから」

電話を切った後、俺は小さくガッツポーズをした。

これで準備は整った。

あとは、当日までに完璧なシミュレーションを重ね、盤石の布石を打つだけだ。

< 328 / 628 >

この作品をシェア

pagetop