アンコールはリビングで
「僕たちは音楽という共通の趣味を通じて、お互いの価値観や人間性を深く理解し合ってきました。今回の同棲についても、決して一時の感情で決めたわけではありません。彼女となら、どんな未来でも一緒に歩んでいける……そう確信したからこそ、急ぎ足に見えるかもしれませんが、一緒に暮らしたいとお願いしたんです」

ビジネスのプレゼンよりも、何倍も熱く、そして拙い言葉。
けれど、それは俺の混じりけのない本音だった。

お父さんはしばらくじっと俺の目を見ていたが、やがてふっと相好を崩した。

「……そうか。凪が選んだ人だ、きっと誠実な人なんだろうとは思っていたが……。うん、その真っ直ぐな目を見れば分かるよ」

「……!」

「若いのによく考えている。娘を、よろしく頼むよ」

認めてもらえた。

その事実に、俺の体からドッと冷や汗のような緊張が抜けていった。

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