アンコールはリビングで
(……ちょ、ちょっと待って。お父さん、湊くんって……私ですらまだ名前呼びしてないのに……!)

二人の間に流れる空気は、すでに「娘の彼氏と父親」という緊張感のあるものではなく、長年の友人のような、あるいは本当の親子のような親密さに満ちていた。

「わ、航さん……! 僕もです! 同世代でこんなディープなジャズの話ができる相手がいなくて……すげぇ嬉しいです」

早瀬くんも、父と話すのが本当に楽しいみたいだ。
琥珀色の瞳がキラキラと輝き、心からの敬意と親愛を持って父に接しているのが分かる。

私はその光景を見つめながら、胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。

「彼氏」としての顔、「ビジネスマン」としての顔、そして「音楽家」としての顔。
そのどれでもない、ただの「一人の青年」として、私の家族に受け入れられている彼。

(よかった。……早瀬くんなら、絶対大丈夫って分かってたけど)

目の前の光景に少しだけ嫉妬しつつ、それ以上に誇らしさがこみ上げてきた。

私が選んだ人は、やっぱり間違いじゃなかった。

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