アンコールはリビングで
3. 限界突破

ジャッ!
ギターの弦を押さえる音が、不自然に部屋に響いた。

「えっ、あっ、ごめ、今のは……!」

自分の口から出た名前にハッとして、私は慌てて両手で口を押さえた。

でも、ギターを横に置いた彼が、ゆっくりとこちらを向く。
琥珀色の瞳には、もう「早瀬くん」の面影は一ミリもなかった。

さっきまで歌っていたR&Bの気怠い色気と、隠しきれない熱情が混ざり合ったような、危険な大人の男の目。

「……今、なんて言いました?」

「……っ、いや、あの、頭の中でずっと考えてたら、つい口から出ちゃって……」

私がしどろもどろに言い訳をしていると、ギターを置いた彼が、ソファの上でズルリと距離を詰めてきた。

そして、肩がぶつかるほどぴったりと密着したかと思うと、逃げ場を塞ぐように私の腰に腕を回し、ぐっと引き寄せる。

「えっ……? は、早瀬くん?」

至近距離で合わさる視線。慌てる私の耳元で、低く、熱っぽい声が聞こえた。

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