アンコールはリビングで
「……俺は結構面倒くさい性格だし、態度もデカいし、独占欲も強い。外ではいい子ちゃん演じてる分、家では凪に甘えるし、我儘も言うぞ。……覚悟できてる?」

「え、ちょ、ちょっと待って……キャラが……」

「うるさい。返事は?」

彼の唇が、私の唇のすぐ手前で止まる。
琥珀色の瞳が、獲物を捕らえるように私を真っ直ぐに見つめている。

「……分かったら、名前呼んで」

「な、名前?」

「『早瀬くん』は禁止。……呼んでくれるまで、離さないから」

腰に回された腕にさらに力がこもる。
私は顔から火が出そうなくらい真っ赤になりながら、震える声でその名を呼んだ。

「……み、……湊……くん?」

私が恐る恐る口にすると、彼はじっと私を見つめたまま、ふるふると静かに首を横に振った。

『くん』付けも禁止、という無言の圧力だ。

逃げ場のない至近距離で、私は観念したように息を吸い込み、恥ずかしさで爆発しそうになるのを堪えながら、もう一度その名を呼んだ。

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