アンコールはリビングで
「……湊」
その瞬間。
湊の表情が、くしゃりと音を立てるように崩れた。
さっきまでの危険な色気はどこへやら、まるでご褒美をもらった子どものような、満足そうで、愛おしそうな、とびきりの笑顔。
「……ん。よくできました」
ちゅ、と小さな音を立てて私の唇にキスを落とすと、彼はそのまま私の首筋に顔を深く埋めた。
「……あー、やっと言えた。ずっとこうしたかった……」
「……えっ?」
「……これからよろしくな、凪」
首筋に吐息がかかり、低く囁かれた呼び捨ての名前。
誰よりも親密で、自分の大切な宝物を呼ぶような、甘くて重い響き。
「……み、湊、重いよ」
「知るか。充電中だ。……しばらくこのままでいさせろ」
そう言って、彼は本当に大型犬のように、私に全体重を預けてきた。
口は悪いし、態度は大きいし、さっきまでの爽やかな王子様像は完全に崩壊している。
けれど、首筋に触れる彼の体温と、力強い腕の感触は、さっきまでの「早瀬くん」よりもずっと温かくて、ひどく愛おしかった。
(……そっか。これが、本当の早瀬くん……いや、湊なんだ)
私は苦笑しながら、私を抱きしめる彼の広い背中に、そっと手を回した。
この夜。
二人の間にあった「敬語」と「遠慮」という壁が完全に消え去り、彼が私だけに見せる素顔と共に、リビングでアンコールを聴く日々が、静かに幕を開けたのだった。
その瞬間。
湊の表情が、くしゃりと音を立てるように崩れた。
さっきまでの危険な色気はどこへやら、まるでご褒美をもらった子どものような、満足そうで、愛おしそうな、とびきりの笑顔。
「……ん。よくできました」
ちゅ、と小さな音を立てて私の唇にキスを落とすと、彼はそのまま私の首筋に顔を深く埋めた。
「……あー、やっと言えた。ずっとこうしたかった……」
「……えっ?」
「……これからよろしくな、凪」
首筋に吐息がかかり、低く囁かれた呼び捨ての名前。
誰よりも親密で、自分の大切な宝物を呼ぶような、甘くて重い響き。
「……み、湊、重いよ」
「知るか。充電中だ。……しばらくこのままでいさせろ」
そう言って、彼は本当に大型犬のように、私に全体重を預けてきた。
口は悪いし、態度は大きいし、さっきまでの爽やかな王子様像は完全に崩壊している。
けれど、首筋に触れる彼の体温と、力強い腕の感触は、さっきまでの「早瀬くん」よりもずっと温かくて、ひどく愛おしかった。
(……そっか。これが、本当の早瀬くん……いや、湊なんだ)
私は苦笑しながら、私を抱きしめる彼の広い背中に、そっと手を回した。
この夜。
二人の間にあった「敬語」と「遠慮」という壁が完全に消え去り、彼が私だけに見せる素顔と共に、リビングでアンコールを聴く日々が、静かに幕を開けたのだった。