アンコールはリビングで
5. 知らなかった過去と、冷めゆくスープ

「……」

特番が終わり、テレビからエンディングテーマが流れても、私はしばらくソファから動けなかった。

(私の知らないところでも、湊は……あんなに一人で、戦っていたんだ)

私が彼に出会った時、彼はすでに「完成された才能」を持っているように見えた。

けれど、その裏には、血が滲むような指先の痛みや、誰にも理解されない孤独、そして「自分の音楽が届かない」という絶望の壁があったのだ。

そんな彼が、私と出会ったことで「歌に熱が宿った」と言ってくれた。
それがどれほど重くて、どれほど愛おしいことか。

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