アンコールはリビングで
2. 冷めたスープと、すれ違う優しさ

しばらくそうして充電を済ませると、湊はゆっくりと体を離した。

さっきよりは少しだけ呼吸が落ち着いているように見えたけれど、目の下には濃い疲労の色が張り付いたままだ。

「お風呂出たら、スープだけでも少し飲む? こんな時間だから晩ご飯はちゃんと食べてると思うけど……最近胃腸も疲れてるだろうし」

私は、リビングのダイニングテーブルにラップをかけて置いてある小鍋を思い浮かべながら、努めて明るい声で聞いた。

「疲れが取れそうなサムゲタン風のスープにしたから、少しでもお腹に入れた方が体調も整うかなって……」

その言葉を聞いた瞬間、湊の顔が目に見えて歪んだ。
彼はひどく申し訳なさそうに眉を下げ、視線を泳がせる。

「……ごめん。スタジオで、出された弁当食ってきちゃってさ、ちょっと腹一杯かも……」

「あ……そっか。ううん、気にしないで! こんな遅いんだもん、お腹空くよね」

「……ほんとは、凪の飯が食いたかったんだけど。……ほんと、悪ぃな……」

疲れ切った顔で、心底残念そうに謝る湊。
その弱気な姿を見ていると、責める気持ちなんて微塵も湧いてこない。

< 364 / 650 >

この作品をシェア

pagetop