アンコールはリビングで
「いいよ、明日食べればいいんだし」と頭では完全に理解しているのに。それでも、ポッカリと空いた私の胸の穴は、さらに冷たい風を巻き込んでいくようだった。

(分かってはいたけど、やっぱり……食べてもらえないのは寂しいな。それに、限界ギリギリの体調を、少しでも整えてほしかった……)

私が小さく愛想笑いを浮かべていると、湊の大きな手が私の頭にポンと置かれた。

「……風呂出たら、俺すぐ寝るわ。先寝てろよ? 凪だって新年度でまた仕事バタついてんだろ?」

気遣うような、寂しそうな困り顔。
彼は私の髪を優しく撫でると、ダイニングテーブルの方に視線をやった。

「……今日も晩メシ、ありがとな。俺、明日の朝出るの早いんだけど……今日作ってもらったやつ、朝メシに食わせてもらうわ」

私の「寂しい」という感情を敏感に察知して、それを少しでも減らそうとしてくれる彼なりの精一杯の優しさだった。

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