アンコールはリビングで
(私に、できること……)

こんなふうに心配で仕事も手につかない状態でいることを、湊は絶対に望んでいないはずだ。

彼は今、身を削って戦っている。
なら、帰る場所である「リビング」を守る私が、こんな腑抜けでどうするのか。

「……よし」

私は自分の両頬を両手でパシッと叩いた。

切り替えよう。
今の私にできるのは、ただ一つ。
彼がいつ帰ってきてもいいように、「聖域」を完璧に整えておくことだ。

そのためには、午前中の遅れを巻き返して、何が何でも定時で帰らなければならない。

私はPCのモニターに向き直り、今日一番の集中力でキーボードを叩き始めた。

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