アンコールはリビングで
普段なら絶対にこんなストレートな甘え方はしないのに、理性が緩みきった彼の本能が、ただひたすらに私の温もりを求めている。

(……ずるいなぁ、もう)

こんなにぽやぽやで無防備な顔を見せられたら、看病のためにベッドを抜け出すことなんて、できるはずがない。

うつされたって構わない。
彼がそれを望むなら、朝までずっとこうしていよう。

「……うん。どこにも行かないよ。ずっとここにいるから、安心して寝て」

私は苦笑しながら、私を抱きしめる彼の広い背中にそっと腕を回し、少し汗ばんだ髪を優しく撫でた。

彼が限界を超えてまで守り抜いてくれたのは、私の心だ。

彼が感じた、あの絶望を味わわせまいという、痛いほどの不器用な愛。

その確かな想いに包まれたこの特等席で、私は彼の寝息が穏やかなものに変わるまで、その熱をただ静かに抱きしめ続けた。

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