アンコールはリビングで
「……おはよ」

少しだけ掠れた、けれどいつもの低くて甘い声。

見上げると、パッチリと目を開けた湊が、至近距離で私を見つめていた。
その瞳には、昨夜のぽやぽやとした熱っぽさはなく、はっきりと理性の光が宿っている。

「おはよう、湊。……気分はどう? 体、まだだるくない?」

「ん。……嘘みたいに体軽い。熱も完全に引いたわ」

湊はそう言って、捕まえた私の手を自分の唇に寄せ、手の甲にチュッと軽いキスを落とした。

「……っ、ちょっと、まだ病み上がりなんだから」

「凪がずっと隣にいて、俺の充電満タンにしてくれたからな。……おかげで一発で治ったわ」

彼は少しだけ照れくさそうに目を細め、私を抱き寄せる腕の力をふわりと強めた。

「昨日の夜、……俺、熱で結構やばくて、無意識に凪のこと引きずり込んだ気するんだけど……うつってない?」

「ううん、全然平気だよ。それに、あんなに素直に甘えてくれる湊、珍しかったから……ちょっと可愛かったし」

私がくすくすと笑いながらからかうと、湊は分かりやすく眉間を寄せて「……うわ、最悪。俺、絶対なんか変なこと言っただろ」と顔を顰めた。

そんな不機嫌そうな顔すらも愛おしくて、私は彼の頬を両手で包み込んだ。

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