アンコールはリビングで
「……面会、してもいいですか」

掠れた声でそう問うと、医師は痛ましそうに短く頷き、病室への道を案内してくれた。

静まり返った個室の病室。
白いベッドの上で、凪は静かな寝息を立てて眠っていた。

腕には何本もの点滴の管が繋がれ、あんなに綺麗だった肌は青白く、ひどく痛々しい。

俺はベッドの傍らに置かれたパイプ椅子に座り、点滴の針が刺さっていない方の彼女の左手を、両手でそっと包み込んだ。

ほんの少しだけ、温もりが戻ってきている。
それだけで、ボロボロと情けない涙が溢れてきそうになった。

――この直後、深夜の非常階段で凪の両親に電話をかけ、自分の無力さと罪悪感に打ちひしがれて声を殺して泣いた後、ご両親が駆けつけてくれるまでの間、俺は一睡もすることなく、彼女が目を覚ますその瞬間まで、ただひたすらにその小さな手を握り、祈り続けていた。

「……なぎ、」

誰に届くわけでもないその名前を呼びながら、俺はシーツに額を押し当てた。

このまま凪が目を覚まさなかったらどうしようという恐怖が、波のように何度も押し寄せてくる。
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