アンコールはリビングで
2. 世界で一番重い着信音

プルルルル……。プルルルル……。

コンクリートの壁に反響する無機質なコール音が、これまでの人生で聞いたどんな音よりも恐ろしく、重く響いた。

(……俺は、どの面下げて電話すればいいんだ)

俺と凪が同棲を始めるにあたって、凪の実家に挨拶に行ったあの日。

俺は航さんの真っ直ぐな目を見て、はっきりと宣言したはずだ。
『凪さんを、必ず幸せにします』と。

それなのに、結果はどうだ。

大切な娘さんを過労死の一歩手前まで追い込み、深夜の病院に救急搬送させました、だなんて。

親の立場からすれば、ふざけるなと殴りかかってきてもおかしくない。
俺が親なら、絶対にそんな男、二度と娘に近づかせない。絶対に許さない。

どんな罵倒でも受ける。殴られてもいい。いや、むしろ殴ってほしかった。
この行き場のない後悔と罪悪感を、誰かに罰してほしかった。

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