アンコールはリビングで
3. 罰よりも残酷な許し

けれど。

『…………そうか』

数秒の重たい沈黙の後、受話器から聞こえてきたのは、怒声ではなかった。

『湊くん……。君が、見つけてくれたんだね』

「……え?」

『一人の時に倒れていたらと思うと……ゾッとする。……湊くんがそばにいてくれて、本当によかった。……ありがとう』

「……っ」

その言葉を聞いた瞬間、俺の胸の中心に、鋭い杭が打ち込まれたような気がした。

電話の向こうでは、事情を察した澪さんが「凪……っ、凪が……っ」と泣き崩れる声が聞こえている。

大切な娘が倒れて、両親がどれほどのショックを受けているか、痛いほど分かる。

それなのに、航さんは。
俺を責めるどころか、震える声で、俺に『ありがとう』と言ったのだ。

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