アンコールはリビングで
「……俺は、もう二度と『ただの彼氏』で立ち止まったりしねぇ」

静まり返った病室で、俺は誰にも聞こえない声で、静かに、けれど絶対に揺るがない決意を口にした。

もし次に、彼女の身に何かあった時。
俺が真っ先にすべての書類にサインをして、すべての責任を背負って、誰よりも堂々と彼女を守り抜ける立場になる。

世間がどう言おうと、事務所がどう言おうと関係ない。
俺は、水沢凪の『家族』になる。

この冷たい病院の夜が明けた時。

彼女が目を覚まして、俺に「ごめんね」という呪いの言葉を口にし、俺が泣き崩れて彼女の自己犠牲の鎖を断ち切るまで、あと数時間。

「……早く目ぇ覚ましてくれよ。……凪がいないと、俺の人生、何も始まんねぇんだから」

ただ今は、俺をこの世に繋ぎ止めてくれる唯一の命綱であるこの手を、絶対に離さないように握りしめ、夜が明けるまで祈り続けることしかできなかった。
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