アンコールはリビングで
4. 不意打ちのデザート

食後の片付けを終え、私たちはソファでまったりタイムに入った。

湊が淹れてくれたハーブティーの湯気が、のんびりと揺れている。

「……今日はありがとね、湊」

「ん?」

「お風呂も洗濯とかもやってくれてて。おかげでゆっくりできた」

私が礼を言うと、彼は「ついでだよ」とそっけなく答えた。

「……そういえば、今日は直帰で家にいたの?」

何気なく訊いた。
テレビ局を早く出たとしても、家事が全部終わっているにしては早すぎる気がしたからだ。

すると、湊が一瞬ピクリと肩を揺らした。

「あ、あぁ。まぁな」

「ふーん?」

「……思ったより巻きで終わってさ。島崎さんも車、飛ばしてくれたし。マジで最高の週はじめだったわー」

彼は少し早口でまくし立てると、ハーブティーをズズッと啜った。

長年付き合っている私には分かる。何か隠している時の顔だ。
でも、やましい隠し事ではなさそう。なぜなら、彼の口元が隠しきれないほど緩んでいるからだ。

「私も。今日は月曜日なのに残業神回避できて、ほんと嬉しかったー!…世の中から残業がなくなればいいのに……」

「ほんとそれな。人類は働きすぎだわ」

私の愚痴に同調しながら、彼はホッとしたように息を吐いた。
バレてない、と思っている顔だ。

そしてまた、手元のマグカップを見つめながら、ニヤニヤと思い出し笑いをしている。

(……怪しい)

でも、その怪しさは、どこか幸せな予感を孕んでいる。

私はソファの上でずるりと彼に近づき、顔を覗き込んだ。
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