アンコールはリビングで
「……なんか、いいね」

「ん?」

「こうやって、外でのんびりするの。久しぶりな気がする」

私が言うと、彼はサングラスを外して、海を見つめたまま小さく頷いた。

「……そうだな。普段はスタジオか家か……お前も会社と家の往復だもんな」

彼は私の肩に頭を預けてきた。
重みと共に、甘えるような吐息がかかる。

「……ここなら、誰にも邪魔されねぇし。俺だけの凪を堪能できる」

「ふふ、なにそれ」

彼は私の手をブランケットの中で弄びながら、海風に吹かれる髪を指で梳いた。

波の音と、彼の鼓動の音が重なる。

ただ寄り添って、同じ景色を見ているだけ。
それなのに、どんな高級なデートよりも満たされている気がした。

「……凪」

「んー?」 

「……いや、なんでもねぇ」

彼は何かを言いかけて、飲み込んだ。
そして代わりに、私のこめかみに優しくキスを落とした。

「……そろそろ行くか。ここからが本番だぞ」

彼がニヤリと笑う。

その笑顔は、いつもの少年のような無邪気さと、大人の男の色気が混ざり合っていて、私はまたしても心臓を撃ち抜かれた。

この完璧なデートの先に、さらに大きなサプライズが待っているなんて、今の私はまだ知る由もなかった。
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