アンコールはリビングで
「……ふーん。シャワーシーン、かぁ」

「ん? なんだよ」

「別に。全国のファンが釘付けになるんだろうなーって」

私が少しだけ茶化すように言うと、彼は箸を置いて、意地悪く目を細めた。

「……何、妬いてんの?」

「や、妬いてないし! プロのお仕事として尊敬してるだけですー」

「ふーん。……ま、俺の裸なんて凪は見飽きてるだろ」

サラッと言われた言葉に、私は思わずご飯を吹き出しそうになった。
何食わぬ顔で食事を再開する彼を睨むが、彼は涼しい顔だ。

……こういうとこ、本当に敵わない。

「そういえば、さっき何読んでたの?」

「あぁ、これ?」

彼がテーブルの脇に置いた本を指差した。

「今撮影しているドラマの原作小説。ドラマの脚本はもう全部読んだけど、原作も面白くてさ。気になって先まで読んじまった」

「へぇ、どんな話なの?」

「んーとな……」

彼は少し考えてから、あらすじを話してくれた。

「主人公は、AIとしか会話しない合理主義のIT社長と、昭和歌謡しか聴かないアナログな古書店員の女の子なんだけど。最初はマッチングアプリの誤操作で出会って、最悪の印象から始まるんだよ。でも、社長が開発した『嘘を見抜くAI』が、その女の子の嘘……本当は寂しいとか、だけは見抜けなくてバグる……みたいな。令和っぽいデジタルな設定なんだけど、中身はコテコテのすれ違い純愛モノ」

「え、何それ面白そう!」

「だろ? 結構泣けるんだよ、後半」

「いいなぁ、私も読みたくなってきた」

「読み終わったら貸すわ。あ、でも本棚に1巻あるから、そっちから読めば?」
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