アンコールはリビングで
それから数日後。
顔色もすっかり良くなり、体調が安定してきた頃。

私はついに、リビングで湊に向かって高らかに宣言した。

「今日から我が家は腸活を徹底します! 発酵食品と水溶性食物繊維、それにオリゴ糖を積極的に摂る……あと、タンパク質とミネラルも!」

急に目を輝かせて語り出した私を見て、湊はぽかんと口を開けたまま固まっていた。

「……凪、急にどうした……? まだ頭、痛いのか……?」

「痛くないよ?私は至って真剣なの。免疫力上げるには腸が一番大事なんだから」

翌日から、私は宣言通りに食生活の改善に乗り出した。
もちろん完璧主義になってストレスを溜めては意味がないので、無理なく続けられる範囲で。

納豆やキムチ、ヨーグルトなどの発酵食品を冷蔵庫に常備し、白米には雑穀を混ぜ、お味噌汁にはきのこや海藻をたっぷりと入れた。

「……なんか最近、我が家のメシ、すげぇ茶色とか緑が多くないか?」

「食物繊維の証だよ。 ほら、湊もちゃんとよく噛んで食べてね」

「はいはい……」

最初は私の急な『健康オタク化』に驚き、戸惑いを隠せなかった湊だったが。

日に日に私の顔色に赤みが戻り、声に張りが増し、イキイキとした笑顔が増えていくのを見るうちに、その表情からは少しずつあの夜の暗い影が消えていった。

「……美味い」

私が作った具沢山のお味噌汁を飲みながら、湊がふっと柔らかく笑う。

その穏やかな顔を見て、私は心の底から『ああ、これでよかったんだ』と安堵の息を吐き出した。

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