アンコールはリビングで
4. 生まれ変わる朝

(もう、自分をすり減らすだけの生き方は終わりにしよう)

翌朝。

洗面所の鏡に映る、見慣れないけれどどこか晴れやかな短い髪の自分を見つめながら、私は静かに息を吐き出した。

自分を大切にできない人間は、本当の意味で誰かを大切にすることなんてできない。

そのことを、私はあの病院のベッドで、彼の痛切な涙から学んだのだ。

私には今、何よりも守るべき場所と、人がいる。
温かいスープの匂いがする私たちの『リビング』と、世界で一番不器用で、世界で一番愛おしい彼。

彼が外の世界のプレッシャーから逃れ、安心して帰ってこられる聖域であり続けるためには。

二人で一緒に、笑い合って生きていくためには。
何よりもまず私自身が、心身ともに健やかで、笑顔でいなければならない。

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