アンコールはリビングで
(……凪はいつも、こんな風に一人で待っててくれたんだな)

俺が帰るかどうかも分からない深夜まで。
せっかく作った身体にいい温かいご飯を、何度も温め直して。

それなのに俺は、忙しさのあまりスケジュールの都合がつけられず、やむを得ず外で出された弁当で晩メシを済ませてしまうことが増えていた。
何とか上手く巻いて、家で凪の手料理にありつきたいと思っていたのに。

『……ごめん。スタジオで、出された弁当食ってきちゃったわ』

あの時の、悲しそうに眉を下げる凪の顔が脳裏にフラッシュバックする。
作って待っていたご飯を、食べられないと言われることの寂しさ。

自分自身が『待つ側』になってみて、初めてその痛みがリアルなものとして肌に伝わってきた。

「……俺、マジで最低だな」

ポツリとこぼした自嘲気味な呟きは、静寂の中に吸い込まれて消えた。

俺は本当に、自分のことばっかりで、彼女がこの『聖域』を守るためにどれだけ心を砕いてくれているか、分かっているつもりで何も分かっていなかったのだ。

これからは、絶対に。
この『待つ側の寂しさ』も、彼女に味わわせないように努力する。

そう固く心に誓った、その時だった。

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