アンコールはリビングで
「同棲して4年だぞ? 凪の周期くらい、スマホのアプリ見なくても俺の頭に入ってんの。それに、数日前から肌荒れ気にしてたし、やたら『甘くて温かいもの飲みたい』って言ってたろ。エスパーじゃねぇよ、ただの凪専用の観察眼だ」

事もなげに言い切るその姿は、あまりにもスマートで隙がない。

彼は昔から、こういう女性特有の体調不良に対する理解が異常なほど深かった。

『俺の4つ上の姉貴、生理痛めっちゃ重いタイプでさ。実家いる時、俺がちょっとでも無神経なこと言ったらマジで殺されかけたからな。女が月に一度必死に耐えてんのに、男が家事くらいで文句言うな、家事して、美味しい温かいもん出して黙ってよしよししとけって、散々叩き込まれたんだわ』

いつだったか、彼が苦笑交じりに教えてくれたことがある。

お姉様仕込みのスパルタ教育の賜物とはいえ、それを「自分の彼女」に対してここまで完璧に、かつ恩着せがましくなく実行できる男は、そういない。

「……ありがとう、湊。ごめんね、せっかくの休みなのに……今日、私動けないかも……」

私が申し訳なさそうに眉を下げる。
すると湊は、琥珀色の瞳を細め、ニヤリとひどく満足げな笑みを浮かべた。

「謝るな。……むしろ、好都合だわ」

「え?」

「今日は一日中、凪を俺の好きに甘やかしていい『大義名分』ができたんだからな。……覚悟しとけよ」

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