アンコールはリビングで
「……わぁ、すごい……」

お盆の上に乗っていたのは、ほうれん草とあさりがたっぷり入った豆乳のチャウダー、そして、ひじきと大豆の煮物、ふっくら炊き上がった温かいご飯だった。

「あさりとほうれん草で鉄分。大豆でマグネシウムとタンパク質。豆乳でイソフラボン。……凪がいつも言ってるやつ、適当に組み合わせて作ったから、味の保証はしねぇけど」

湊はぶっきらぼうにそう言いながら、私の前にスプーンを置いた。

失われた鉄分を補い、体を芯から温め、お腹にも優しい完璧なラインナップ。
ただの「優しい」だけじゃない、私の身体のメカニズムを完璧に理解した上での、彼なりの最高の処方箋だった。

「……湊、お母さんみたい……」

「は? 誰がオカンだ。世界一イケてる彼氏だろ」

不満げに唇を尖らせる彼に、私はふふっと笑ってスープを一口飲んだ。

「……んっ、美味しい! 豆乳のコクがすっごく優しい……これ、本当に湊が作ったの?」

「俺を舐めんな。……凪が作ってくれたレシピ、ちゃんと見てんだよ。ほら、冷める前に全部食え。薬飲むんだろ」

温かいスープが胃の腑に落ちていくと、強張っていた子宮のあたりがじんわりと解れていくのが分かった。

痛みが完全に消えるわけではないけれど、彼が私のためにこれを作ってくれたという事実が、何よりの鎮痛剤だった。

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