アンコールはリビングで
「……湊、ごちそうさまでした。すっごく美味しかった……」

「ん。よしよし。偉いな」

食後の薬を飲んだ彼女の頭を、ポンポンと撫でてやる。

普段なら「もう、子ども扱い過ぎない?」などと恥ずかしがって払いのけられそうなところだが、今日の彼女は気持ちよさそうに目を細め、俺の手のひらに頬をすり寄せてくる。

(……やばい。可愛すぎて変な声出そう)

俺は必死にポーカーフェイスを保ちながら、空いた食器を片付けるために立ち上がろうとした。

しかし、その前に凪が、俺の服の裾を小さな手できゅっと掴んだ。

「……んん……湊、ありがと……」

半分眠りかけているような、とろんとした潤んだ目で俺を見上げ、無意識に甘えた声を出してくる。

その破壊力に、俺は立ち上がるのをやめ、再びソファの横に片膝をついて彼女の顔を覗き込んだ。

「……あのさ、凪」

「……ん……?」

俺は彼女の頬を包み込み、親指でその柔らかい唇をそっとなぞりながら、誰にも聞かれないように低く、掠れた声で呟いた。

「……そんな無防備な顔で甘えんの、マジで俺の腕ん中だけにしとけよ。……今、俺がどれだけギリギリで理性保ってるか、凪は絶対分かってねぇだろ」

「……え、湊……?」

「……いや、何でもねぇ。ほら、洗い物しとくから、そのまま寝てろ。毛布ずれてんぞ」

目を丸くしている凪に毛布を鼻先までかけ直し、俺は逃げるようにキッチンへと向かった。

外の世界では何万人もの視線を浴びるスターだが、今の俺はただの「凪専用のスーパー甘やかしマシーン」だ。

そして、その役割が死ぬほど気に入っていた。

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