アンコールはリビングで

27 春風に乗せた秘密のドライブ

1. 非日常への出発

待ちに待った、金曜日の朝。

「うわぁ、湊、この車どうしたの?」

旅行の荷物を詰めたボストンバッグを手に、マンションの地下駐車場に降り立った凪が、目の前に停まっている見慣れない黒いSUVを見て驚きの声を上げた。

それは、英国製の高級SUV・レンジローバー。
流線型のスタイリッシュなボディに、スモークガラスがしっかりと貼られた、重厚感とラグジュアリーさを兼ね備えた車体だ。

「ああ。事務所が持ってる車、島崎さんが気を利かせて貸してくれたんだよ。これなら外から中見えねぇし、パパラッチ対策もバッチリだからな」

「すごい、かっこいい……! さすが、スター早瀬湊のマネージャーさんだね」

感心したように車体を眺める凪の頭を軽く撫でて、俺は助手席のドアを開けた。

「ほら、お姫様。お乗りください」

「ふふっ、ありがとう、運転手さん」

冗談めかして笑い合いながら、俺たちを乗せた車は、春の柔らかな陽射しが降り注ぐ東京の街を抜け出し、一路、北へと向かって走り出した。

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