アンコールはリビングで
30分後。
高速道路のパーキングエリアで運転を代わり、俺は生まれて初めて、凪の運転する車の『助手席』という未知の領域に座ることになった。
「よしっ。それじゃ、出発するね」
シートポジションを調整し、ハンドルをしっかりと握った凪の横顔は、いつもの柔らかい雰囲気とは少し違い、真剣そのものだった。
去年の夏に倒れるまで、現場ディレクターとしてあちこちの現場を車で走り回っていた彼女は、実はかなりの運転好きで、そして上手い。
大きな外車だというのに、合流も車線変更も、一切の危なげなくスムーズにこなしていく。
(……やばい。これ、最高だわ……)
外からの視線が完全に遮断された車内。
運転に集中して前を見ている彼女の横顔を、俺は誰の目も気にすることなく、助手席からただひたすらに見つめ放題なのだ。
ハンドルを握る華奢な腕。
真剣な眼差し。
時折、サイドミラーを確認する時の、少しだけ上がる顎のライン。
いつもは俺が運転席で前を見ているから、こんな風に彼女の表情をずっと眺めていることなんてできなかった。
「……なんか、視線感じるんだけど。私の運転、そんなに危なっかしい?」
信号待ちのタイミングで、凪が少し不安そうにこちらをチラリと見た。
「いや? めちゃくちゃ上手い。ただ……運転してる凪の横顔が新鮮すぎて、見惚れてただけ」
「っ、もう……変なこと言ってからかわないでよ。こっちは真剣なんだから」
彼女は分かりやすく頬を赤く染め、慌てて前を向き直った。
その照れた顔すらも愛おしくて、俺は彼女の運転する車の心地よい揺れに身を任せながら、助手席という特等席を心の底から堪能したのだった。
高速道路のパーキングエリアで運転を代わり、俺は生まれて初めて、凪の運転する車の『助手席』という未知の領域に座ることになった。
「よしっ。それじゃ、出発するね」
シートポジションを調整し、ハンドルをしっかりと握った凪の横顔は、いつもの柔らかい雰囲気とは少し違い、真剣そのものだった。
去年の夏に倒れるまで、現場ディレクターとしてあちこちの現場を車で走り回っていた彼女は、実はかなりの運転好きで、そして上手い。
大きな外車だというのに、合流も車線変更も、一切の危なげなくスムーズにこなしていく。
(……やばい。これ、最高だわ……)
外からの視線が完全に遮断された車内。
運転に集中して前を見ている彼女の横顔を、俺は誰の目も気にすることなく、助手席からただひたすらに見つめ放題なのだ。
ハンドルを握る華奢な腕。
真剣な眼差し。
時折、サイドミラーを確認する時の、少しだけ上がる顎のライン。
いつもは俺が運転席で前を見ているから、こんな風に彼女の表情をずっと眺めていることなんてできなかった。
「……なんか、視線感じるんだけど。私の運転、そんなに危なっかしい?」
信号待ちのタイミングで、凪が少し不安そうにこちらをチラリと見た。
「いや? めちゃくちゃ上手い。ただ……運転してる凪の横顔が新鮮すぎて、見惚れてただけ」
「っ、もう……変なこと言ってからかわないでよ。こっちは真剣なんだから」
彼女は分かりやすく頬を赤く染め、慌てて前を向き直った。
その照れた顔すらも愛おしくて、俺は彼女の運転する車の心地よい揺れに身を任せながら、助手席という特等席を心の底から堪能したのだった。