アンコールはリビングで
3. 山肌の葡萄畑と、永久保存版の笑顔

栃木県に入り、高速を降りた俺たちは、地元で採れた新鮮な野菜をたっぷり使った一軒家レストランでランチを楽しんだ後、午後の目的地へと向かった。

「わぁ……すごい! 山の斜面、全部葡萄畑なんだね!」

足利方面へ向かう道中に立ち寄ったのは、広大な山の斜面に葡萄畑が広がる、有名なワイナリーだった。

木漏れ日が差し込む小道を歩きながら、凪がパァッと顔を輝かせる。

平日で、しかも車で直接敷地内に入れたこともあり、周囲に人の気配はほとんどない。

俺は目深に被っていたキャップを少しだけ上げ、隣を歩く彼女の細い腰に、自然な動作で腕を回した。

「ほら、足元気をつけろよ」

「うん、ありがとう」

俺の腰に回された手に寄り添うように、彼女がピタリと身体を寄せてくる。

初夏の少し手前の、心地よい風が吹き抜けていく。

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