アンコールはリビングで
「やーだね。これは俺の永久保存版だから」

「もうっ、湊のいじわる! 絶対消してよー!」

「消さねぇよ。めちゃくちゃ可愛い顔してんのに、もったいない」

ピョンピョンと背伸びをしてスマホを奪おうとする彼女を、片手でひらりひらりと躱しながらからかう。

誰もいない葡萄畑の小道に、二人の笑い声が響く。

「……ほんと、子供なんだから」

「凪が隙だらけなのが悪い」

少し息を切らして抗議する彼女の頬を、俺は愛おしそうに指の背で撫でた。

スマホのアルバムの中の『凪専用フォルダ』に、また一つ、俺だけが知っているとびきり可愛い宝物が増えた。

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