アンコールはリビングで
28 紫に染まる春の夜
1. マジックアワーと紫の天井
「うわぁ……っ!」
少しひんやりとした夕方の風が吹き抜ける中、エントランスゲートをくぐった凪が、感嘆の声を上げて立ち止まった。
時刻は午後5時を少し回ったところ。
空はまだ明るさを残しつつも、西の端からゆっくりと深い群青色に染まり始めている、いわゆるマジックアワー。
目の前に広がっていたのは、視界を覆い尽くすほどの巨大な紫の天井だった。
「すごい……湊、見て! どこまでもずっと藤の花だよ……!」
見上げる凪の瞳に、頭上から降り注ぐように咲き誇る無数の花房が映り込んでいる。
甘く、それでいてどこか品のある花の香りが、春の夜の空気に溶け込んでいた。
ここは、県内でも有数の規模を誇る植物園。
平日とはいえ、見頃を迎えた園内にはそれなりに人がいる。
俺は目深に被っていた黒いキャップを少しだけ下げ、隣ではしゃぐ彼女の華奢な腰にグッと腕を回し、自分の身体にピタリと引き寄せた。
「うわぁ……っ!」
少しひんやりとした夕方の風が吹き抜ける中、エントランスゲートをくぐった凪が、感嘆の声を上げて立ち止まった。
時刻は午後5時を少し回ったところ。
空はまだ明るさを残しつつも、西の端からゆっくりと深い群青色に染まり始めている、いわゆるマジックアワー。
目の前に広がっていたのは、視界を覆い尽くすほどの巨大な紫の天井だった。
「すごい……湊、見て! どこまでもずっと藤の花だよ……!」
見上げる凪の瞳に、頭上から降り注ぐように咲き誇る無数の花房が映り込んでいる。
甘く、それでいてどこか品のある花の香りが、春の夜の空気に溶け込んでいた。
ここは、県内でも有数の規模を誇る植物園。
平日とはいえ、見頃を迎えた園内にはそれなりに人がいる。
俺は目深に被っていた黒いキャップを少しだけ下げ、隣ではしゃぐ彼女の華奢な腰にグッと腕を回し、自分の身体にピタリと引き寄せた。