アンコールはリビングで
3. 渓谷に溶ける夜

夕食を終え、少しお腹が落ち着いた頃。
俺たちは、部屋のテラスにある専用のヒノキ風呂へと向かった。

「……っ、ふぁ〜……あったか〜い……」

夜の冷たい空気に触れながら、少し熱めの温泉に肩まで浸かった凪が、とろけるような声を出して目を閉じた。

そのすぐ隣で、俺もざぶりと湯船に身を沈める。
眼下には真っ暗な渓谷が広がり、ザァザァと流れる川の音が心地よいBGMになっている。

見上げれば、東京では絶対に見られないような、無数の星が夜空に瞬いていた。

「……なんか、夢みたい」

お湯の中で、凪がそっと俺の手に自分の手を重ねてきた。
俺はその手をしっかりと握り返し、そのまま彼女の身体を自分の胸元へと引き寄せた。

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