アンコールはリビングで
二人でのんびりと朝食を平らげた後、俺たちは再び客室露天風呂に浸かって朝の澄んだ空気を堪能したり、大きなベッドに潜り込んでゴロゴロと他愛のない話をしたりと、時間を忘れて徹底的に堕落したひとときを過ごした。

「……あー、このまま一生ここから出たくない……」

俺の腕枕でスマホをいじっていた凪が、ポツリと本音をこぼす。

「全くだな。もうずっと仕事とか全部すっぽかして、このまま――やべっ」

壁に掛かった時計の針が、11時を指そうとしているのを見た瞬間、俺は弾かれたようにベッドから身を起こした。

「えっ、どうしたの湊?」

「わりぃ、凪! 次の目的地、予約の時間入れてたんだった! あと30分くらいで出ねぇと間に合わねぇ!」

「ええっ!? 次の目的地って何!? 早く言ってよー!」

のんびりモードから一転、凪も慌ててベッドから飛び起きる。

「ごめん! 完全に時間忘れてた! ほら、早く着替えねぇと!」

「もう、湊のバカ! 私のメイクの時間、計算に入れてないでしょ!」

洗面所へと駆け込む彼女の文句を背中で受けながら、俺も急いで荷物をボストンバッグに詰め込み始めた。

完璧なエスコートとは言い難いバタバタ劇だが、そんなハプニングすらも、今の俺たちにとってはたまらなく楽しくて、部屋の中には二人の笑い声が絶えず響いていた。

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