アンコールはリビングで
4. 帰るべき場所と、最後の執念

「……お疲れ様でした。ありがとうございました」

夜の20時を回った頃。
すべての撮影を終え、俺はスタッフたちに深く頭を下げてスタジオを後にした。

「早瀬くん、乗って」

島崎さんの車に乗り込んだ瞬間、俺はシートに深く身体を沈め、そのまま泥のように意識を手放した。

「早瀬くん……早瀬くん、着いたよ」

どれくらい眠っていたのだろうか。

島崎さんの心配そうな声で目を覚ますと、車は俺のマンションの地下駐車場に停まっていた。

「……すんません、寝落ちしてました」

「謝らなくていい。顔、真っ赤だよ。俺が部屋まで送るから……」

「いや……大丈夫っす。一人で、帰れます」

俺は島崎さんの制止を振り切り、重いドアを開けて車を降りた。
足がうまく前に出ず、視界がぐらぐらと揺れる。

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