アンコールはリビングで
2. スターの威嚇

週末の六本木、交差点の少し手前。
見知らぬ男――いや、凪の『元彼』だという男が、俺の凪の細い腕を強引に掴んで引き留めている。

『……彼氏より俺の方が付き合い長いじゃん。高校ん時付き合ってたみたいに、タメで話してよ』

その言葉が耳に届いた瞬間、俺の中でギリギリ保たれていた理性の糸が、ブチッと、音を立てて完全に千切れた。

「もう……話通じない……っ」

凪が泣きそうに顔を歪めた、その時。

「――凪」

俺は、自分でも驚くほど冷たく、そして完璧に作り上げられた『スターの笑顔』を顔に貼り付けて、二人の間に割って入った。

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