アンコールはリビングで
「……怒ってねぇよ」

「でも、ずっと黙ってるし……」

「……」

俺はグラスをテーブルにコトリと置くと、深く息を吐き出し、ソファの背もたれに頭を預けて天井を仰いだ。

「……怒ってんじゃなくて、気が狂いそうだっただけ」

「えっ?」

俺はゆっくりと顔を戻し、ドレスアップした綺麗な凪を見つめた。
透けるようなネイビーのレース。少しだけ巻かれた髪。俺のためにおめかししてくれたはずのその姿。

「……あんな男に、この綺麗な姿を見られた。腕を触られた。……その事実だけで、マジで嫉妬でどうにかなりそうだった」

「湊……」

「余裕ぶって『終わったら迎えに行く』なんて言ったけど……全然、余裕なんてなかった。他の男が凪に触れるのを見た瞬間、全部ぶっ壊して、凪を誰もいないとこに閉じ込めたくなった」

自分の奥底にある、醜くて重たい独占欲。
それを隠すこともできず、俺は自嘲気味に笑って、両手で自分の顔を覆った。

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