アンコールはリビングで

33 初夏のショートヘアと、サマー・ジェラシー

1. 見知らぬシルエットと、キッチンの動揺

「ただいま」

5月半ば。
玄関から、少し疲れたような、けれど甘さを帯びた湊の声が聞こえた。

私は夕食の支度をしていた手を止め、エプロン姿のまま廊下へと向かう。

「おかえり、湊……えっ?」

廊下の突き当たり。
黒いキャップを脱ぎ、マスクを外した彼と目が合った瞬間。

私の手から、カランッ、と乾いた音を立てて菜箸が床に落ちた。

目の前にいるのは、紛れもなく私の恋人である早瀬湊だ。
けれど、今まで少し長めで、前髪から色気を漂わせていた彼の髪が、嘘みたいに短くなっている。

おでこをすっきりと出した、爽やかなセンターパート。
首筋が露わになり、彼の端正でシャープなフェイスラインが、いつも以上に強調されていた。

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