アンコールはリビングで
「……驚いたか?」

私が言葉を失って立ち尽くしていると、湊は悪戯っぽく、けれど少しだけ照れくさそうに笑った。

「6月のツアーに向けてさ、思い切って切ってみた。……どう? 俺もまだ、鏡見るたびにちょっと見慣れねぇんだけど」

彼は少し落ち着かない様子で、短くなった前髪を指先でかき上げた。

その仕草一つでさえ、今までとは違う種類の、新鮮で鋭い男らしい色気が放たれる。

「……あ、っ、う、うん……!」

私は慌ててしゃがみ込み、菜箸を拾い上げながらなんとか声を絞り出した。

「す、すごい……似合ってる!! びっくりしたけど、うん、すごくいいと思う……!」

動揺を隠そうとして、どうしても声が上擦ってしまう。
私の煮え切らない反応に、湊の琥珀色の瞳が少しだけ不満げに細められた。

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