アンコールはリビングで
「……なんだよ、反応薄いな。凪に一番に『かっこいい』って言わせたくて切ってきたのに、失敗したか……?」

少ししょんぼりと自分の短くなった襟足を撫でる彼に、胸の奥がギュッと甘く締め付けられた。
そんな子犬みたいな顔で、ズルい台詞を言うなんて反則すぎる。

「あ、っ、ごめん! 私、お肉焼いてる途中だから! 戻るねっ!」

これ以上直視したら、絶対に心臓が持たない。
私は逃げるようにくるりと背を向け、早足でキッチンへと戻った。

シンクの縁を掴み、誰にも見られないように大きく深呼吸をして荒い息を吐き出す。

今までの、少し気だるげで大人の色気が漂う髪型も、もちろん最高に好きだった。

でも、今日のあれは反則だ。

29歳という等身大の爽やかさと透明感。
それなのに、ふとした瞬間に覗く剥き出しの男っぽさ。

(……どうしよう。信じられないくらい好みすぎる……まともに顔見られない……)

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