アンコールはリビングで
夕食を終えた後。
目の前でくつろぐ『ニューヘア湊』のビジュアルが強すぎて直視できない私は、気を紛らわせるためにソファの端でスマホの画面をスクロールしていた。

しかし、画面に映っているSNSのタイムラインを見て、私はさらに恨めしい気持ちになってしまった。

トレンドの上位には、【早瀬湊_短髪】【夏ビジュ】【早瀬くんかっこよすぎ】といったワードがズラリと並んでいる。

今日、彼が公式アカウントにアップした一枚の写真。

少し胸元を開けたシャツを着て、短く切ったセンターパートの髪で流し目をする……私の理性を粉々に吹き飛ばした、あの破壊力抜群の姿だ。

『短髪の早瀬くんヤバい! 破壊力エグい!』

『色気と爽やかさの暴力……付き合いたい……』

ファンのみんなが喜んでいるのは、一番のファン兼サポーターを自称する私にとって、普段なら誇らしいことのはずだ。

でも、今回だけは違った。
あの短い襟足を撫でた感触も、あの上目遣いで私を狂わせた高い体温も、私だけのものなのに。

世間の人たちに『理想の彼氏』として消費されているような気がして、私らしくもない黒い嫉妬が渦巻いてしまう。

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