アンコールはリビングで
「まあ、ちょっと茶化して話したけどよ……もしかしたら、このマンションの近くにも張り始めるかもしれねぇ」

お椀から顔を上げた湊の瞳からは、先ほどまでの余裕ぶった色はすっかり消え去り、代わりに隠しきれない苛立ちと焦りが滲んでいた。

「そんなこと絶対にさせたくないし、もしいたら本当にぶっ飛ばしてやりてぇけど……。悪い。凪も、前よりもちょっと気をつけてもらえると助かるわ」

申し訳なさそうに眉を下げる湊を見て、私はハッとして小さく頷いた。

「うん……そうだね。今はツアー前で一番大切な時期だし。私も、出入りする時とか気をつけるね」

「おう」

神妙な顔をして俯いてしまった私を心配したのか、湊がパンッと手を叩いて明るい声を出した。

「あー、終わり! この話はこれで終わりな! せっかくの凪の美味い晩メシの時に、こんな話してわりぃ」

そう言って私の頭をポンと撫でた後、少しだけ言いにくそうに視線を泳がせた。

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