アンコールはリビングで
「……掲載を見送っていただけるなら。来週、他事務所の大物カップルの『決定的な裏付け』を、うちの情報網からそちらに一つ流しましょう。……どうですか?」

数秒の重苦しい沈黙の後。

『……分かりました。今回の早瀬の件は、完全に社外秘で処分します。……相変わらず、島崎さんはえげつない交渉をしますね』

「お褒めに預かり光栄です。では、神崎の撮影は予定通りということで。よろしくお願いいたします」

通話を切り、俺はふぅと短く息を吐いた。
手の中のスマホを軽く弄りながら、非常階段の暗闇の中で冷たく微笑む。

(……うちの早瀬湊に手を出そうなんて、10年早いんだよ)

記事の揉み消しは完了した。

あとは、この事実を専務と早瀬くん本人に伝え、今後の警戒レベルを上げさせるだけだ。

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