アンコールはリビングで
主人公に密かに想いを寄せながらも、彼女の幸せのために身を引く決意をした時の、あの切なくて自嘲気味な笑顔。

そして、ドラマが中盤の山場を迎えた第6話の放送後。
SNSのタイムラインは、かつてないほどの熱狂の渦に巻き込まれていた。

『待って、早瀬湊の演技ヤバくない!? なんであんな表情できるの!?』

『私なら絶対に朔斗くんを選ぶわ……! 相手役より断然朔斗くん派!!』

『あんなに切ない「お幸せに」聞いたことない。色気と切なさの暴力で死んだ』

トレンドの上位を、湊とドラマ関連のワードが独占している。

ミュージシャンとしての彼しか知らなかった世間が、俳優・早瀬湊の持つ底知れない魅力と色気に気づき、完全に狂わされていた。

「……すごいなぁ、湊」

私はスマホの画面を見つめながら、誇らしさと、そしてほんの少しだけの寂しさを感じていた。

私の大好きな湊のあの切ない表情や、耳元で囁くような甘い声が、ドラマというフィルターを通したことで、世間の女性たちにすっかり見つかってしまったのだ。

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