アンコールはリビングで
「……3人揃って顔を合わせたのは、数年前の兄貴の結婚式以来か」

俺がポツリと呟くと、2人の視線がスッと俺に集まった。
そう、今日はただの近況報告会ではない。

親父も認めてくれた『白井不動産』を、3月31日で退職すること。
そして6月、音楽の世界でメジャーデビューを果たすこと。

明日、実家に帰って、親父にその決断を叩きつけに行く。

……絶対に揉めることは目に見えている。
だからこそ、その前にどうしても、この2人にだけは俺の口から直接伝えておきたかった。

「……兄貴、姉貴。俺……」

俺は膝の上で拳を握りしめ、意を決して告げた。

「会社、辞めるわ」

「……」

「……6月に、歌手としてデビューする。……親父の敷いたレールからは、降りることにした」

重たい沈黙が落ちた。

怒られるだろうか。
「バカなことを」と呆れられるだろうか。

俺は無意識に肩に力を入れ、2人の反応を待った。
すると。

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