アンコールはリビングで
「――っしゃあああ!!!」

「よく言ったわ! さすが湊!!」

予想外の歓声と共に、兄貴と姉貴が同時にガッツポーズをした。

「……え?」

「あんた、やっと決心したのね! 遅い! 遅いけど偉いわ!」

俺が呆気にとられていると、姉貴は満面の笑みで身を乗り出し、俺の肩をバンバンと叩いた。

「どういうことも何も、見てりゃ分かるわよ。あんた、学生の頃からずっと息苦しそうだったじゃない」

姉貴はカクテルの残りを一気に飲み干し、ふぅっと小さく息を吐いた。

「学生の時からずっとギターと歌に打ち込んでてさ……あれはお母さんへの寂しさを埋めるためでもあったんだろうけど……」

懐かしむように目を細め、まるであの多感だった頃の俺を見るような、ひどく優しい眼差しを向けてきた。

「本当はそっちの道に行きたいんだろうなってことくらい、母親代わりしてた私にはよく分かってたわ。……でも、あの頃は背中を押してあげられなくて、ごめんね」

どこか痛みを滲ませたような優しい声に、俺は思わず目を見張った。

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