アンコールはリビングで
「いや、ほんとに。湊を支えてくれる人がいてよかったよ。ほっとした。……親父とぶつかる今の湊には、絶対に必要な存在だ」

「……」

「どんな人なんだ? お前がそこまで言うくらいだ、相当素敵な人なんだろうな」

「……まあ。すげぇ真面目で、優しくて、芯が強い人だよ」

照れくささを誤魔化すように、俺は手元のグラスに視線を落とした。

「俺が音楽やるって言った時も、一切否定しないで、俺の歌が好きだからって、背中押してくれて」

脳裏に凪のまっすぐな瞳と温かい言葉が蘇り、自然と口元が緩んでしまう。

「……料理もすげぇ美味いし。一緒にいると、なんか全部どうでもよくなるくらい安心するんだわ」

俺がポツリポツリと語ると、兄貴と姉貴は顔を見合わせ、信じられないものを見るような目をした。

「完全に惚気だわ。ていうか、べた惚れね」

「これはこれは……俗にいうゾッコンってやつだな」

ニヤニヤとからかってくる2人に、俺はハッとして口をつぐんだ。
自分ではただ事実を言っただけのつもりだったが、傍から見ればただの惚気だったらしい。

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