アンコールはリビングで
Intermission 2 不器用な愛の行方
1. 最後の出社と、静かなる自室
兄貴と姉貴に俺の覚悟を打ち明けた翌日の3月31日。
桜が咲き始めたというのに、実家である早瀬家の門をくぐると、空気が一変して冬に戻ったかのような刺すような冷たさを感じた。
俺は今日、新卒で入社した国内最高峰のデベロッパー『白井不動産』での最終出社日を終えた。
直属の上司や同僚たちからは「早瀬がいなくなるのは本当に痛手だ」と心底惜しまれ、盛大に送別されたが、俺の心はすでに、全く別の新しいステージへと向かっていた。
俺の右手には、会社のロッカーから持ち帰ってきた大きな紙袋が握られている。
中に入っているのは、綺麗にクリーニングされた、濃紺のビスポークのスリーピーススーツ。
入社して初めての冬のボーナスをほぼ全額叩いて仕立てた、俺の『戦闘服』だ。
若造だからと取引先や同僚から侮られないように自分を武装するため、そして、この名家の人間として恥じないようにと身に纏っていたものだった。
兄貴と姉貴に俺の覚悟を打ち明けた翌日の3月31日。
桜が咲き始めたというのに、実家である早瀬家の門をくぐると、空気が一変して冬に戻ったかのような刺すような冷たさを感じた。
俺は今日、新卒で入社した国内最高峰のデベロッパー『白井不動産』での最終出社日を終えた。
直属の上司や同僚たちからは「早瀬がいなくなるのは本当に痛手だ」と心底惜しまれ、盛大に送別されたが、俺の心はすでに、全く別の新しいステージへと向かっていた。
俺の右手には、会社のロッカーから持ち帰ってきた大きな紙袋が握られている。
中に入っているのは、綺麗にクリーニングされた、濃紺のビスポークのスリーピーススーツ。
入社して初めての冬のボーナスをほぼ全額叩いて仕立てた、俺の『戦闘服』だ。
若造だからと取引先や同僚から侮られないように自分を武装するため、そして、この名家の人間として恥じないようにと身に纏っていたものだった。